Saturday. 06 September 2025
先生がどうしておむすびをくれたのかは謎だが、戦場から生き延びた理由は知っている
今日はD先生のことを書こうかなぁと思います。
普通は子どもや孫に話して聞かせる思い出話の類なんですが、
私には子どもも孫もいないから。
でも、どこかに書き残しておけば、誰かの記憶の片隅に残るかも。
先日の黒猫のタンゴのジャケットみたいに、誰かが覚えておいてくれたら嬉しいから。
D先生は、私が中学生のときの社会担当の先生。
その頃すでにかなりのお歳。
中学校のとき、私はかなり目立ってました。
A小学校とB小学校の卒業生で構成された中学校で、
私一人が東京から来た生徒。
いつも、A小学校・B小学校・Tさん、と3行で扱われていました。
教師陣からも、地元じゃないとのことで、腫れ物?扱いでしたが、
D先生だけは普通に雑?に扱ってくれたのです。
社会の初めての授業で、「なぜ歴史を学ぶのか?」と私に問いかけてくる。
「未来を知るため…」と、受け売りの言葉で返したら、正解だったらしい。
気に入ってくれました。
ベルトが緩くて、いつもズボンをずり上げてました。
先生はベルトではなく「バンド」って言ってましたけどね。

D先生は戦争に行った経験があります。
戦争の頃、私の父は中学生、母は小学生。
二人とも戦時中の思い出・記憶があまりなく、私にとって戦争の話≒D先生でした。
D先生の戦争の話は、赤紙が来て、軍の部隊が決まる前の晩から始まります。
みんなが雑魚寝するなか、ふと夜中に目が覚めてトイレに立ったD先生。
トイレに向かう途中で、上官2人がお酒を飲みながら話していました。
D先生は、テントの裏で盗み聞きをすることに……。
上官A「俺は、西から敵が来ると連絡があれば東に、北から来るとあれば南に行くんだ!」
上官B「え、それでは戦えないではないですか?」
上官A「だから戦わないんだよ!」
上官B「……、そんなこと、間違っても言ってはいけませんよ!」
翌日、所属部隊を決めるとき、D先生は上官Aに部隊に加えてほしいと猛アピール。
あまりにも積極的で、その熱意に負けて、上官Aは自分の部隊に入れてくれました。
さて、D先生の部隊は、とある南の島に上陸しました。
あちこちで激しく戦火があがり、多くの部隊が全滅していく島でした。
上官Aは有言実行。本当に、西に行けと言われれば、東に行き、
進めと言われれば後退し、訳を問われればさまざまな言い訳を繰り広げ・・・。
もっぱらの仕事は、食料探し。トカゲやカエルも食べたそうです。
カエルの茹で方、授業で教えてくれたなぁ……笑。
D先生は結局、1度も戦わずに、敵兵に会うことすらなく戦争を終えたそうです。
その島で生き残って日本に再び戻れたのは、上官Aの率いるD先生の部隊だけ。
ボロボロになったテイを装い、皆、真実を言わないでいたそうです。
(いや、きっとD先生以外はみんなこの話は墓場に持っていったことだろうと思います)
D先生曰く、例えこの一部隊が命令通りに動いたって、日本は負けてたよ、と。
本当にそう思います。
先生は「やりたくないことをやれと言われたら、逃げればいいんだよ。やらなくていいから」
困難や苦難があっても逃げずに立ち向かえ、そんなことを言う大人が多いなか、
本当に説得力のある言葉でした。
さて、中学校時代の私の登校時間は朝の7時半。
学校が始まるのは8時40分。早い? だよね。
この頃から活字中毒だった私の毎朝の日課は、
職員室に直行して鍵を図書室と音楽室の鍵を借りるところから始まりました。
そして図書室に昨日読み終わった本を返して今日用の本を借り、
音楽室に行ってフルートの練習をする(ブラスバンド部だったので)ために。
職員室には、D先生だけがもういるんだわ、必ずいるんだわ。
冬は職員室のストーブに石炭を焚べて、お湯を沸かしてインスタントコーヒーを飲んでるの。
時折りなぜか奥さんが握って持たせたおむすびを、私にくれるの。
時々なので、当てにしてはいないけど、食べながらもなぜおむすび?と気になります。
おむすびをくれるタイミングや理由を探るのですが、どうしてもわからない。
D先生が朝ごはんが食べられなかった日なのか、夜勤がある日なのか、何気なく聞くのですが……。
その会話をD先生は楽しんでいるのか、大人の知恵ではぐらかされました。
結局わからずじまい……。
クラス担当のないD先生は、職員室で給食を食べます。
冬はストーブ、夏は机の上に置いた熱電器で、給食の食パンを焼くのです。
「生のパンなんて食べられるか!」
「先生、パンは焼いたからパンになっているのであって、生じゃないよ」
こんな会話を懲りずに繰り返してたわー。
お約束の会話みたいに。
ところでこの小さな中学の図書室は本当に小さくて、
卒業するまでに置いてある本はほとんど読み終わりました。
ある分野の本を除いては・・・・天文学です。
そのときはまったく興味なかったので。
占星術をメインとする今、もしこの頃に戻れたら、
「天文学を避けるな、むしろそれだけは読め!」と伝えたい!
大きな声で伝えたい。
です!

